匠雅音の家族についてのブックレビュー 史上最低 元カレ コンテスト|清水ちなみ&OL委員会編

史上最低 元カレ コンテスト お奨度:

清水ちなみ&OL委員会編 幻冬舎文庫、2002年  ¥571−

著者の略歴−1963年東京都生まれ。青山学院大学卒業。コンピューター会社在職中に「OL委員会」を発足。退社後、同委員会の会報発行のかたわら、執筆、講演等を行う。著書に『サルでもできる料理教室』『女のしあわせどっちでショー』『いんげんだもの』など。
 すでに別れた彼氏には、愛憎相半ばする気持ちだろう。
本書は、その中でも最低の彼氏を、競うコンテストである。
9歳から37歳まで775通の投稿のなかから、14歳から35歳までの164人の投稿が選ばれている。
この年齢は、女性たちがつきあっていた年齢で、現在の年齢ではない。
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 15歳は中学の3年生だが、すでにセックスをしているのが目立つ。
世の大人たちはセックスの低年齢化を嘆くが、セックスの低年齢化は良いことである。
農耕時代には12〜3歳になれば、結婚の対象になったのだから、肉体は充分に成熟していた。
現代の若者は、はるかに栄養状態がいいのだから、肉体の成熟はもっと早いだろう。
肉体が成熟しているのに、セックスをさせないのは不自然である。
可能であれば、いつやっても良い。

 史上最低の彼氏だから、悪口が並ぶのは当然だと思っていたら、必ずしも単純ではない。
相手を責めるのはもちろんだが、なぜあんな男とつきあってしまったのか、と自分の目のなさを嘆く者がおおい。
今だったら絶対につきあわないが、若かったのだと嘆く。

 自分史の汚点だ、という声が上がるのはおもしろい。
男なら一つの体験として納まっていくのだろうが、女性はあくまでも自分を責めている。
しかし、バカな男にひっかった自戒を込めて、恨み辛みに終始しないのは、女性の力が強くなってきた証であろう。
 
17歳
 そんなにかっこ良くないけど、すごーく気の合う人で、デート代も全て払ってくれたんだけど、私の会社の子と、しかも2人も同時進行していた!!
 なぜ分かったかというと、えっちの時「ゆみ〜」と言った後で「あっ!」と思ったらしく改めて「ようこ〜」と言ったのだ。しかし、私の名前はゆみでもようこでもないので、ソッコー服を着てチンチンをけっとばして帰り、そのまま別れた。何カ月かして、ゆみとようこが男の事でモメてるらしいってウワサで全て分かった。くそ−。今思い出してもハラ立つ!!
質問:えっちの方はいかがでしたか?
答え:すごく良かった。またそれもハラ立つ


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 この女性はじつに痛快である。
自分の主義にあわない者は、いさぎよくノーと言える。
そんな気持ちの良さは、専業主婦になりたいスタンスではありえない。
自分で稼いで、自分が自分を養っているから、可能なのだ。
「すごく良かった。またそれもハラ立つ」という答えも、じつに正直で好感がもてる。
20歳過ぎても処女という化石は、存在しなくなったようで、慶賀の限りである。

18歳
(前略)その後、今のカレまで約3年、誰ともつきあわないまま(今のを入れて)10人の男とえっちしましたが、ヤツが1番うまいです。息づかいとか、肌の感触とか、テクニック以上にそういう所でも、私の中では、ダントツで1番なんです。ヤツより好きになれる相手がもう現われないんじゃないか、とか思うと、とてもくやしいです。1番初めにジョーカーを引いてしまった気分です。(後略)


 この女性は、いまでも元カレに好感を持っているらしく、年イチでいいから抱いてくれ、と言っている。

 最低の元カレは、女性とのつきあいが多くて、ほとほと嫌になったのに、今でも忘れられないらしい。
これもまた正直な感想であろう。
 
 20歳くらいまでは、純粋に愛憎やセックスの問題で、てんやわんやの騒ぎをしている。
しかし、20歳を過ぎる頃から、女性に金を借りる男性が増えてきて、それを返せ返さないの騒ぎになる。
とくに成人たちは、別れるときのマナーが悪い。

 本書では男性がストーカーになると言う例が多い。
しかし、女性サイドから書かれているので、男性だけが嫌がらせをしているようだが、
男女平等の世の中、男性サイドからの発言があれば、女性も相当な嫌がらせをしているというだろう。
年をとると、妙な浅知恵がついてしまうのだろうか。

 女性のほうから別れ話をもちだすと、今までの強気が一転して、捨てないでくれとメソメソする男性が多い。
また、デートの最中に失踪してしまうとか、旅行中に行方不明になってしまう男性がいたり、女性たちもおちおち恋愛を楽しめないようだ。

 極めつきは、結婚式に表れなかったという男性が、2人もいて驚いた。
これは立ち直るのに、かなりの時間がかかったと想像する。
またご多分にもれず、暴力をふるう男性も登場し、こうなると人間性の問題になってくる。

 編者が「あとがき」で書いているが、若い男性たちの性欲のすさまじさ。
異性への興味と相まって、やりたいというエネルギーが、突拍子もないことになってしまう悲喜劇である。
しかし、性欲に忠実な若者の行動は、男女ともに許せる。
読んでいて楽しい。
当人たちも、青春の思い出として、今では頭をかいているだろう。
本能からの過ちは、取り返しがつく。

 困惑するのは、年齢が高くなった人たちが、自己中心的な行動をしていることである。
年齢とともに本能を失ったのだから、おとなしくしていればいいものを、
妙な妄想が行動へと駆り立てる。
30歳にもなって、精神的な潤いのなさに失望する。    (2002.8.23)
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参考:
G・エスピン=アンデルセン「福祉国家の可能性」桜井書店、2001
G・エスピン=アンデルセン「ポスト工業経済の社会的基礎」桜井書店、2000
エドワード・ショーター「近代家族の形成」昭和堂、1987
杉田俊介「フリーターにとって「自由」とは何か」人文書院、2005年
下田治美「ぼくんち熱血母主家庭 痛快子育て記」講談社文庫、1993
イヴォンヌ・クニビレール、カトリーヌ・フーケ「母親の社会史」筑摩書房、1994
江藤淳「成熟と喪失:母の崩壊」河出書房、1967
スアド「生きながら火に焼かれて」(株)ソニー・マガジンズ、2004
田中美津「いのちの女たちへ」現代書館、2001
末包房子「専業主婦が消える」同友館、1994
梅棹忠夫「女と文明」中央公論社、1988
ラファエラ・アンダーソン「愛ってめんどくさい」ソニー・マガジンズ、2002
まついなつき「愛はめんどくさい」メディアワークス、2001
J・S・ミル「女性の解放」岩波文庫、1957
ベティ・フリーダン「新しい女性の創造」大和書房、1965
クロンハウゼン夫妻「完全なる女性」河出書房、1966
松下竜一「風成(かざなし)の女たち」現代思想社、1984
モリー・マーティン「素敵なヘルメット職域を広げたアメリカ女性たち」現代書館、1992
小野清美「アンネナプキンの社会史」宝島文庫、2000(宝島社、1992)
熊沢誠「女性労働と企業社会」岩波新書、2000
ジェーン・バートレット「「産まない」時代の女たち」とびら社、2004
楠木ぽとす「産んではいけない!」新潮文庫、2005
山下悦子「女を幸せにしない「男女共同参画社会」 洋泉社、2006
小関智弘「おんなたちの町工場」ちくま文庫、2001
エイレン・モーガン「女の由来」どうぶつ社、1997
シンシア・S・スミス「女は結婚すべきではない」中公文庫、2000
シェア・ハイト「女はなぜ出世できないか」東洋経済新報社、2001
中村うさぎ「女という病」新潮社、2005
内田 樹「女は何を欲望するか?」角川ONEテーマ21新書 2008
三砂ちづる「オニババ化する女たち」光文社、2004
大塚英志「「彼女たち」の連合赤軍」角川文庫、2001
鹿野政直「現代日本女性史」有斐閣、2004
片野真佐子「皇后の近代」講談社、2003
ジャネット・エンジェル「コールガール」筑摩書房、2006
ダナ・ハラウエイ「サイボーグ・フェミニズム」水声社 2001
山崎朋子「サンダカン八番娼館」筑摩書房、1972
水田珠枝「女性解放思想史」筑摩書房、1979
フラン・P・ホスケン「女子割礼」明石書店、1993
細井和喜蔵「女工哀史」岩波文庫、1980
サラ・ブラッファー・フルディ「女性は進化しなかったか」思索社、1982
赤松良子「新版 女性の権利」岩波書店、2005
マリリン・ウォーリング「新フェミニスト経済学」東洋経済新報社、1994
ジョーン・W・スコット「ジェンダーと歴史学」平凡社、1992
清水ちなみ&OL委員会編「史上最低 元カレ コンテスト」幻冬舎文庫、2002
モリー・マーティン「素敵なヘルメット」現代書館、1992
R・J・スミス、E・R・ウイスウェル「須恵村の女たち」お茶の水書房、1987
末包房子「専業主婦が消える」同友館、1994
鹿嶋敬「男女摩擦」岩波書店、2000
荻野美穂「中絶論争とアメリカ社会」岩波書店、2001
山口みずか「独身女性の性交哲学」二見書房、2007
田嶋雅巳「炭坑美人」築地書館、2000
ヘンリク・イプセン「人形の家」角川文庫、1952
スーザン・ファルーディー「バックラッシュ」新潮社、1994
井上章一「美人論」朝日文芸文庫、1995
ウルフ・ナオミ「美の陰謀」TBSブリタニカ、1994
杉本鉞子「武士の娘」ちくま文庫、1994
ジョンソン桜井もよ「ミリタリー・ワイフの生活」中公新書ラクレ、2009
佐藤昭子「私の田中角栄日記」新潮社、1994
斉藤美奈子「モダンガール論」文春文庫、2003
光畑由佳「働くママが日本を救う!」マイコミ新書、2009
エリオット・レイトン「親を殺した子供たち」草思社、1997
奥地圭子「学校は必要か:子供の育つ場を求めて」日本放送協会、1992
フィリップ・アリエス「子供の誕生」みすず書房、1980
伊藤雅子「子どもからの自立 おとなの女が学ぶということ」未来社、1975
ジェシ・グリーン「男だけの育児」飛鳥新社、2001
末包房子「専業主婦が消える」同友館、1994
熊沢誠「女性労働と企業社会」岩波新書、2000
ミレイユ・ラジェ「出産の社会史 まだ病院がなかったころ」勁草書房、1994
ウルズラ・ヌーバー「<傷つきやすい子ども>という神話」岩波書店、1997
エリザベート・パダンテール「母性という神話」筑摩書房、1991
編・吉廣紀代子「女が子どもを産みたがらない理由」晩成書房、1991
塩倉裕「引きこもる若者たち」朝日文庫、2002


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