著者の略歴− コラムニスト。小説家。4月3日生まれ。おひつじ座のB型。モデル・OL・キャバ嬢・バイヤー・広告代理店・SEなどさまざまな仕手を経験したのち、著述業に転身。現在は、雑誌・TV・Web・モバイルコンテンツなど多方面で活躍中。『コントラスト〜あなたしか愛せない〜』(竹書房)、『女豹本!〜狙ったオトコを必ず射止める60のテク〜』(ベストセラーズ)、『運がよくなるお引越し』(中経出版)、『「アブナイ恋」を「運命の恋」に変える!』(モバイルメディアリサーチ)など、著書多数。●公式サイト【Sweet Bitter Choco】http://shimadakana.net/ ●公式ブログ【夜明けのショコラ。】 http://blog.livedoor.jp/shimadakana/ 穏やかではない書名だが、内容はいたって真面目である。 際物めいた仕立てが、真面目な書評からは、冷たい扱いを受けているかも知れない。 しかし、きわめて精神性の強い恋愛論で、本書が女性によって書かれたことが、良い時代になっている証拠であろう。
筆者は、<婚外恋愛><略奪恋愛><複数恋愛><愛人>などを経験し、いずれも世間からは後ろ指をさされてきたという。 しかし、恋愛とは本来、結婚制度とは次元の違うものだ。 貴族たちは世継ぎを残すために結婚した。 つまり、結婚とは精神的なものではなく、ただ財産や権力を守るためになされた。 それに対して、恋愛は<好き>だという気持ちの表れで、結婚とは別になされたのだ。 近代に入って、工業社会の労働者をつくるためには、核家族が適していたので、恋愛と結婚を連続したものにした。 1人の男に1人の女をつがわせると、男たちはよく働いた。 だから恋愛→結婚を賛美したに過ぎない。 しかも、初期の工業社会は、女性には職業を用意できなかったので、専業主婦にして浮気を封じたのだ。 しかし、男たちには買春を黙認して、性の二重規範を作った。 かつて国民皆婚の時代には、婚前交渉などという言葉があり、セックスと結婚が一体化していた。 もっといえば、恋愛→結婚→セックスと流れるのが、正当な行動であった。 恋愛だけして結婚しないのも許されなかったし、セックスだけして結婚しないのは、最悪で犯罪者呼ばわりされた。 恋愛とは恋している精神状態なのであって、結婚制度いいかえると生活とは無関係である。 かなり自由に行動している筆者だが、まだ工業社会の倫理から自由になっていない。 そのため、自己責任恋愛論といった副題をつけている。 恋愛を恋愛として楽しむことに、やや後ろめたさを感じているようだ。 恋愛はつねに恋し続ける心であって、生活上の終着点はない。 にもかかわらず、恋愛が成就する時点を想定しているのが気にかかる。
@ 「浮気」は「本気」に転じるが、「本気」は「浮気」に転じない 浮気とは、言葉の通り「浮ついた恋」。 昨日まで「浮気」だったとしても、たった今「本気」に変化する可能性を秘めているのです。 逆に、一度本気で愛した相手を、浮気に格下げすることはありえません。 それは、自分の彼氏に置き換えて考えればわかりますよね。 本気で愛した相手への気持ちが冷めたときは、倦怠期になるか別れるかしか、選択肢は考え付かないものなのです。 つまりは、後から割って入ったあなたという立場は、本命の彼女と彼が別れ、かつ彼があなたを本気で愛するモードに切り替わらない限り、浮気の域を脱しないんです。 もちろん、それはあなたと彼次第ですけどね☆ P66 筆者の言う通りだとは思う。 しかし、恋愛が本気になったとして、その後どうなるというのだろう。 恋愛とはその時を共に生きるものであり、心の状態である。 離ればなれのときには、相手を独占しようがないではないか。 相手の気持ちじゃなくて、自分の気持ちが恋愛しているのだから、本気の恋愛の先とはどんな状態なのだろうか。 筆者も恋愛を恋している精神状態として考えており、肉体関係ともちょっと違うものとして捉えている。 セックスをしたからといって、恋人になったとも、傷物になったとも考えていない。 むしろ、恋愛とセックスを分けることによって、恋愛の精神性を高めている。 セフレをもちながら、恋人をもつのもOKだという。 当然であろう。 セックスには何よりも健康な肉体が必要だが、恋愛には肉体よりも精神が必要なのだ。 いままで男性は買春してきたのだから、女性だってセックスだけを味わっても良いと思う。 筆者のような発言が可能になった背景は、女性が職業につき、独自の収入を得たからだ。 無収入の専業主婦なら、こんなことは公言できない。 複数のオトコと仲良くすることは、決してそのオトコと彼を同じ位置に置くことではありません(もちろん完全にフタマタ状態で、行ったりきたり……というケースもあるとは思いますが)。入り口段階では、おそらく異なるポジションに存在しているはず。 あなたが今の彼氏に対して物足りないと思う部分を、満たすオトコと出逢ったのなら、そっちとも仲良くしたって、いいと思いません? 年上のオトコと、年下のBF。 仕事はできるけど、その分忙しくて逢えないオトコと、フリーターで稼ぎは少ないけど、いつでも駆けつけてくれるマメなオトコ。 SEXに淡白なオトコと、相性だけはいいセフレ。 魅力的なオトコならば、誘われるばかりでなく、あなたが誘ってもいいのです。 そうして複数のオトコによって欲求を満たしているうちに、きっとあなたは気づくはずです。 必要なものと、なくても困らないもの。あなたの心の中にある、オトコへの愛情の種類と、愛だけじゃ片付けられない、必要な条件。 いろんなオトコと関わることは、他でもない、あなた自身を知る作業でもあるのです。 P95 収入のない者は、生活を支えられないから、恋愛の主導権を握ることはできない。 女性に職業がなかったので、いままで女性は待つ存在で、男性が与える立場だった。 そうした時代に教育を受けてきたので、多くの人はどうしても女性が受け身で、男性が働きかけるという発想から抜け出せない。 しかし、女性も職業人になり、男性とならぶようになった。 これから女性は、男性のライバルにもなるだろうが、ほんとうの友人にもなれるようになった。 男女が等価な人間になったので、ほんとうの恋愛もできるようになった。 本書からは女性の成熟を感じる。 しかし、恋愛と生活は別次元のモノだから、生活に足をすくわれないように気をつけよう。 (2009.9.5)
参考: フランチェスコ・アルベローニ「エロティシズム」中央公論 1991 ジョルジュ・バタイユ「エロスの涙」ちくま学芸文庫、2001 オリビア・セント クレア「 ジョアンナの愛し方」飛鳥新社、1992 石坂晴海「掟やぶりの結婚道 既婚者にも恋愛を!」講談社文庫、2002 梅田功「悪戦苦闘ED日記」宝島社新書、2001 山村不二夫「性技 実践講座」河出文庫、1999 謝国権「性生活の知恵」池田書店、1960 清水ちなみ&OL委員会編「史上最低 元カレ コンテスト」幻冬舎文庫、2002 プッシー珠実「男を楽しむ女の性交マニュアル」データハウス、2002 生出泰一「みちのくよばい物語」光文社、2002 赤松啓介「夜這いの民俗学」明石書店、1984 生出泰一「みちのくよばい物語」光文社、2002 福田和彦「閨の睦言」現代書林、1983 田中優子「張形−江戸をんなの性」河出書房新社、1999 佐藤哲郎「性器信仰の系譜」三一書房、1995 アンドレア・ドウォーキン「インターコース」青土社、1989 カミール・パーリア「セックス、アート、アメリカンカルチャー」河出書房新社、1995 シャノン・ベル「売春という思想」青弓社、2001 シャノン・ベル「セックスワーカーのカーニバル」第三書館、2000 アラン・コルバン「娼婦」藤原書店、1991 曽根ひろみ「娼婦と近世社会」吉川弘文館、2003 アレクサ・アルバート「公認売春宿」講談社、2002 バーン&ボニー・ブーロー「売春の社会史」筑摩書房、1991 編著:松永呉一「売る売らないはワタシが決める」ポット出版、2005 エレノア・ハーマン「王たちのセックス」KKベストセラーズ 2005 高橋 鐵「おとこごろし」河出文庫、1992 正保ひろみ「男の知らない女のセックス」河出文庫、2004 ロルフ・デーゲン「オルガスムスのウソ」文春文庫、2006 ロベール・ミュッシャンプレ「オルガスムの歴史」作品社、2006 菜摘ひかる「恋は肉色」光文社、2000 ヴィオレーヌ・ヴァノイエク「娼婦の歴史」原書房、1997 ジャン・スタンジエ「自慰」原書房、2001 ジュリー・ピークマン「庶民たちのセックス」KKベストセラーズ、2006 松園万亀雄「性の文脈」雄山閣、2003 ケイト・ミレット「性の政治学」ドメス出版、1985 謝国権「性生活の知恵」池田書店、1960 山村不二夫「性技−実践講座」河出文庫、1999 ディアドラ・N・マクロスキー「性転換」文春文庫、2001 赤川学「性への自由/性からの自由」青弓社、1996 佐藤哲郎「性器信仰の系譜」三一書房、1996 ウィルヘルム・ライヒ「性と文化の革命」勁草書房、1969 田中貴子「性愛の日本中世」ちくま学芸文庫 2004 ロビン・ベイカー「セックス・イン・ザ・フューチャー」紀伊國屋書店、2000 酒井あゆみ「セックス・エリート」幻冬舎、2005 大橋希「セックス・レスキュー」新潮文庫、2006 アンナ・アルテール、ベリーヌ・シェルシェーヴ「体位の文化史」作品社、2006 石川弘義、斉藤茂男、我妻洋「日本人の性」文芸春秋社、1984 高月靖「南極1号伝説」バジリコ、2008 石川武志「ヒジュラ」青弓社、1995 佐々木忠「プラトニック・アニマル」幻冬社、1999 生出泰一「みちのくよばい物語」光文社、2002 村上弘義「真夜中の裏文化」文芸社、2008 赤松啓介「夜這いの民俗学」明石書店、1994 岩永文夫「フーゾク進化論」平凡社新書、2009 ビルギット・アダム「性病の世界史」草思社、2003 メイカ ルー「バイアグラ時代」作品社、2009 イヴ・エンスラー「ヴァギナ・モノローグ」白水社、2002 橋本秀雄「男でも女でもない性」青弓社、1998 エヴァ・C・クールズ「ファロスの王国」岩波書店、1989 岸田秀「性的唯幻論序説」文春文庫、1999 能町みね子「オカマだけどOLやってます」文春文庫、2009
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